「相続させる」と「遺贈」の違い 遺言書作成の基礎知識

こんにちは、山口県の行政書士 廣戸です。

自分で遺言書を書く際に文言の書き方を間違えると、争いのものになったり、もしかしたら遺言書が無効になってしまう事態になるかもしれません。

今回は遺言書の書き方を間違わないための基礎知識として「相続させる」と「遺贈」について解説します。

「相続させる」と「遺贈する」はどう違うの?

遺言書に「相続させる」と、「遺贈する」と書いた場合では、手続きの面で違いが出ます。簡単に言ってしまうと「相続させる」と書ける場合には、「相続させる」と書いたほうが良いです。

「相続させる」と書ける場合とは、 財産を残したい相手 が法定相続人の場合です。法定相続人に対して「遺贈する」と書くと、のちの手続きが複雑になってしまうため、「相続させる」と書いたほうがいいということになります。以下①から③が「相続させる 遺言」と「遺贈する 遺言」の違いです。

①相続による不動産登記についての違い

「相続させる 遺言」の場合は、不動産を相続した相続人単独で不動産の所有権移転登記ができます。

「遺贈する 遺言」の場合は、遺言執行者がいればその人と移転登記を行い、遺言執行者がいなければ、相続人全員で行わなければいけません。

ほかにも、仮に所有権の移転登記手続きが完了する前に、第三者によって不動産の所有権が勝手に移転されてしまった場合でも、「相続させる 遺言」の場合は、その行為を無効にすることができます。「遺贈する 遺言」の場合は、登記がなければ無効にすることは難しいです。

③農地の手続きの違い

「遺贈する 遺言」の場合は、包括遺贈の場合以外は、農地法による基本的に農業委員会又は知事の許可が必要になります。

「相続させる 遺言」の場合は、農地法3条の許可はなくても、相続による移転登記登記ができます。

包括遺贈とは
全部又は、一定の割合で指定して行う遺贈のことです 。
特定遺贈とは
遺贈する財産を指定して行う遺贈のことです。

②借地権、賃借権に関する違い

「遺贈する 遺言」の場合は、包括遺贈の場合は賃借人の承諾は不要ですが、特定遺贈の場合は承諾が必要になります。

「相続させる 遺言」の場合、賃借人の承諾は不要です。

まとめ

「相続させる」と書く場合には書いたほうが良いです。

書ける場合は、財産を残す相手は法定相続人のときです。法定相続人以外の第三者は相続人ではないので、「相続させる」と書いても効力はありません。

「遺贈する」という言葉は誰に対しても使うことができます。しかし、法定相続人に対して書くと、遺言執行手続きを進めるうえで面倒な手続きが増える場合がありますので、法定相続人に対しては「相続させる」と書くことをおすすめします。