認知症の母をのぞいた遺産分割協!?

相続、Q&A解説

Q, 父が90歳で亡くなりました。

相続人は母と私(長男)を含めた3人(長女、次女)の子供です。母は認知症のために私の顔すらわからない状況です。父の遺産分割について母を除いた相続人で遺産分割を行うことはできますか?

A、母を除いた3人(長男、長女、次女)で遺産分割協議を行うことはできません。家庭裁判所に母の代理人(成年後見人等)を選任してもらい、その代理人を含めた4人(長男、長女、次女+代理人)で遺産分割協議を進める必要があります。

遺産分割協議は相続人全員の同意が必要

遺産分割協議は法定相続人全員の同意が必要になります。一部の相続人が参加してない遺産分割協議は無効になってしまいます。

お母様は息子さんの顔もわからない状態ですから、意思能力について問題があると思われますので、遺産分割協議をこのまま行ってもお母さんの意思基づくものとは認められず無効になると思われます。

そこでお母様には代理人である成年後見人等が必要になります。

認知症の代理人(成年後見人等)

相続人の判断能力が不十分である場合は代理人となる成年後見人を立てる必要があります。

成年後見人(法定後見人)として選任されると、お母様(被後見人)の代理として、財産の保護・管理を行うことや、必要な契約の締結等をお母様が亡くなるまで行います。

その中に、今回の遺産分割協議も含まれます。

そもそも成年後見(法定後見制度)とは

そもそも成年後見などの法定後見制度とは、認知症や精神上の障がい等により意思能力が不十分な人に対して適用される保護制度のことです。

法定後見人には認知症の状況により次の 3 つの種類分けられ、それぞれに代理人に与えられる権限が異なります。

  • 成年後見:意思決定がほとんどできない人が対象
  • 保佐:意思能力が著しく不十分な人が対象
  • 補助:意思能力が不十分な人が対象

成年後見人を選ぶのは家庭裁判所

成年後見人は家庭裁判所に申立てをして選任してもらいます。

申立てできるのは本人・配偶者・4親等内の親族(親・祖父母・子・孫・ひ孫・兄弟姉妹・甥・姪・叔父・叔母)です。

主な必要書類は下記です。家庭裁判所のホームページからダウンロードできます。

https://www.courts.go.jp/nagoya-f/saiban/tetuzuki/vcmsFolder_678/vcms_678.html

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 後見人候補者事情説明書
  • 親族の同意書

法定後見制度を利用する場合にかかる費用

戸籍などの必要書類の収集料金や申立てに必要な費用が別途かかるほか、

相場で法定後見人に対して月額 2 万~ 6 万円程度かかるとされています。また、法定後見の費用は「相続手続き」だけの間だけでなく、亡くなるまでかかる費用ですので注意が必要です。